オートサウンドWebグランプリ2015の選考を終えて

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先月頭から中旬にかけてオートサウンドWebグランプリ2015の試聴と選考を行い、ゴールドアワードのアルパイン・ビッグXを筆頭に、10機種が選出された。その受賞製品と各選者の配点はAuto Sound Webをごらんいただきたいが、ここでは僕なりの選考理由を記しておきたい。



まずは、第1次選考の配点をごらんいただきたい。ここでの持ち点は一人20点。対して、僕が上位10機種に割り当てた点は16点だから、残り4点は選外の機種に配点している。

その機種は、

ブラム 165.45
モレル VIRTUS NANO602
ハーツ MLK1650.3
オーディオウェーブ Aspire Pro

上記4点に各1点ずつ配点している。また、今回はなぜかケンウッド彩速ナビ、MDV-Z702がエントリーリストに載っていなかったが、これがエントリーされていたら、間違いなく1〜2点は配点していたと思う。ということは、他の機種から点が削られることになるのだが。

選外の機種に点を入れた理由を挙げておく。まずブラム165.45。62,000円(税別)と、手頃な価格のセパレート2ウェイスピーカーは、ウーファーの取り付け奥行きを60mmに抑えた設計で、取り付けもしやすい。ややドライ傾向の音はヌケがよく音楽が躍動的に聞こえるのが魅力。ウーファーの振動板のリブが効いているのか低音にしっかり感がある。
ブラム165.45(62,000円/税別)
モレルのVIRTUS NANO602は、トゥイーターよりも薄い取り付け奥行き17mmのウーファーが画期的。ドアの厚みがない軽自動車や、もともとドアスピーカーの設定がないクルマなどにも取り付けできる可能性も高まる。その形状ゆえ、試聴室で聴いたときには低音の解像度に物足りなさを感じたが、車載状態では低音が膨らみ、十分に量感ある低音が楽しめる。また、何よりトゥイーターが魅力的。瑞々しく艶っぽく、時には力強くもある中高域が、このスピーカーの良さを引き立てている印象だ。
モレルVIRTUS NANO602(100,000円/税別)のウーファー部
ハーツのMLK1650.3は、生まれ変わった同ブランドのフラッグシップ・スピーカー、Milleレジェンド・シリーズのセパレート2ウェイスピーカーシステム。ハイスピード全盛の今時の音とはちょっと違って、音の立ち上がりやややまったりしていて解像度もほどほどの印象だが、聴き心地の良さが魅力で、こんな傾向のスピーカーがあってもいいと思う。独特のVコーン・ウーファーのおかげか低音は深く、トゥイーターは繊細。レスポンスと解像度を追い求めたスピーカーが多い中、このような落ちついた音のスピーカーは貴重だと思う。

オーディオウェーブのAspire Proは、省エネやエコが叫ばれる今時のクルマ事情にははっきりいってそぐわない大型&大電流消費アンプだが、やはり電気を喰うアンプらしい太く力強い音がする。価格が60万円だから、コストパフォーマンスを考えると決していいとは言えないが、世の中、効率の良さだけを考えた時代になっていてはつまらない。このような、昔ながらのオーディオの良さは、残していきたいものだ。

このような投票ののち10ベストが決まり、次はゴールド/シルバー/ブロンズの各アワードを決める投票である。ゴールドにふさわしいと思うものに3点、シルバーが2点、ブロンズが1点というわけだ。

実際にはゴールドアワードがアルパインのビッグX、シルバーがダイヤトーン・サウンド・ナビの最新モデル、MZ100シリーズ、ブロンズがオーディソンのBitPlay HDに決まったわけだが、僕が投票したのは3点がMZ100シリーズ、2点がビッグX、1点がブラックスのGX-2400Graphicという順番だ。このへんの理由を述べよう。
ゴールドアワードに選出されたのはアルパイン・ビッグX
まず上位2台のカーナビだが、どちらも音がいい。アルパイン低音側に魅力があり、対してダイヤトーンは中高域側が大いに魅力的だ。このように音の傾向が異なるため、どちらに多くの点を入れるかは、もう好み次第だと思う(1点も入れていない選者がいたのはどうにも解せないが)。

僕がMZ100シリーズをゴールドに推した理由は、Auto Sound Web上にも書いているが、まず中高域の解像度がずば抜けて高かったことだ。ビッグXでもカロッツェリアX+ブラックスGXアンプの組み合わせでも聴こえなかった微小な音が、MZ100シリーズでははっきりと聴き取れたのである。これには正直驚いた。S/Nの良さを突き詰めた結果といえよう。
僕はDIATONE SOUND.NAVI MZ100シリーズをゴールドに推挙
もう一つの大きな理由は、システムアップの中核としても薦められる点だ。カロッツェリアXのCDトランスポート&デジタルプロセッサーの販売が終了したいま、ハイエンドなシステムを組むためのヘッドユニットが、どんどん減っている。ざっと思い浮かぶのが、ダイヤトーン・サウンド・ナビ以外には、同じくダイヤトーンのDA-PX1とヘリックスのDSP-PROくらいだ。

そんななか、MZ100シリーズは、これまでのMZ90シリーズに比べてプリアウトの音質向上にも力を入れた。プリアウトの出力電圧を上げただけではなく、マルチNFBピュア伝送バッファアンプという新設計の回路構成により、グランドループを排除したり、出力部のカップリングコンデンサによる音質劣化を排除したり、フィードバックループ内の部品の影響を極小化したり、DACからプリアウト端子までの伝送ノイズを除去するなど、外部アンプ接続時の音質を大幅に改善しているのだ。

対してビッグXは、内蔵アンプの音は素晴らしいものの、外部アンプを接続した時の音はなんとなく人工的。つまり内蔵アンプで鳴らした音が完成形で、オーディオ・システムとしての発展性はやや弱い。そこも、MZ100シリーズをゴールドに推した大きなポイントだ。

とはいえ、アルパイン・ビッグXの音も魅力的だ。とくに低音の安定感は素晴らしく、ベースの音像がまったくブレなく、音程もふらつかないあたりはMZ100シリーズ以上のものがある。また車種専用設計なのを逆手にとって、音質チューニングも車種別に行っているという。細かいノウハウは企業秘密とのことだが、イコライザー等の機能を使ってチューニングするのではなく、回路的に行っているのだとか。それはピアノの調律を行うような地味な作業だというが、そのようなオーディオ的なチューニングを行っているあたりも恐れ入る。対応車種のオーナーで、外部アンプのシステムアップは頭になく、内蔵アンプのままでいいというなら、ビッグXという選択肢もありだと思う。

僕がブロンズに推したのは、実際にアワードに輝いたオーディソンのBitPlay HDではなく、ブラックスの新アンプ、GX2400 Graphicだ。なぜ推したかは単純明解。音が良いからだ。このアンプ、これまでのX2400 Graphic Editionと瓜二つのルックスだから、マイナーチェンジと思われがちだが、中身は全然違う。電源部なんかはマトリックス・シリーズに近く、低音の力強さはその系統を継いでいる。そして音の立ち上がりのレスポンスに関してはGraphic Editionの良さを持っている印象。個人的な好みを言えば、どちらかというとマトリックス・シリーズよりも、こちらのほうが好みである。
一番下がブラックスGX-2400Graphic(390,000円/税別)
だからといってBitPlay HDに魅力がないわけではない。車載用としては現時点で唯一のハイレゾプレーヤーであるし、ミュージックサーバーとしても使い勝手がいい。スマートフォンでの操作も可能で、AUX入力があれば純正システムへ接続してもいい。幅広い対応力も魅力だ。またWi-Fi対応に対応していて、今後はファームウェアのアップデートにより、音楽のストリーミング再生ができる可能性もあり、そうなるとApple Musicなどの定額音楽配信サービスをドライブ中にワイヤレスで楽しめる可能性もある。

このように、10ベストに選ばれた機器は、どれも魅力的だし、残念ながら選外ではあるが、1回目の投票で僕が点数を入れた4機種も含めて、自信を持ってお勧めできる。あとケンウッドのMDV-Z702もだ。この冬、カーオーディオのグレードアップを考えている人がいたら、製品選びの参考にしてほしい。